「2年間の研究で生まれたスーパーパワーの『ケイソウくん』
他のメーカーの珪藻土系壁在とのホルムアルデヒド低減性能を比較しました」

神奈川県産業技術センター 化学技術部 主任専門員  石丸 章

廃珪藻土にホルムアルデヒドを吸着する成分が!

最初にワンウィルさんから持ち込まれた珪藻土を試験したのは2004年のことでした。ホルムアルデヒドの低減性能の試験依頼でした。

すぐに試験を実施したところ、この珪藻土は24時間でホルムアルデヒドを測定不可能な値まで吸着しました。(ホルムアルデヒド2.4PPMの濃度の空気を投入した試験:2.4PPMは目や喉への刺激で人間が居たたまれないほどの高濃度)

これまでに実施したホルムアルデヒド吸着実験では、化学物質を配合した無機吸着剤で同じような結果が出ることがありましたが、この珪藻土には化学物質は添加されていませんでした。

では、「この珪藻土には一体何が含まれているのだろう?」
興味を持った私は、早速この結果をワンウィルの山本社長へお知らせして、尋ねました。

「今回の実験対象の珪藻土はどういうものですか?」
その答えは、とある醤油メーカーがろ過に使用した後の『廃珪藻土』を混合した「ケイソウくん」だということでした。

そこで、このホルムアルデヒドの低減効果を発揮した『廃珪藻土』に含まれる成分は何なのか?調査と研究を開始しました。

驚くべき低減効果の正体をつきとめる!

はじめに、これまでの研究実績からこの有効成分を予測しました。

醤油工場やビール工場の廃珪藻土には、アミンやアミノ酸類、酵母などの窒素を含む有機物が含まれています。ホルムアルデヒドの吸着効果は、これらの有機物なのではないか、という予測です。

研究を続けた結果、『アミノ基を持つ有機物と、珪藻土、配合した粘土鉱物などの無機成分とに相乗効果が生まれ、ホルムアルデヒド低減に大きな効果を与えている』ことがわかりました。

スーパーパワーを持つ「ケイソウくん」の製品化へ

アミノ基を持つ有機物と、配合の無機成分との相乗効果によるホルムアルデヒド低減の効果が判明し、次に製品化に向けたステージへと研究開発は進みます。廃珪藻土は製品に使用するためのリサイクルコストなど多くの課題が残るため、この有効成分と同じアミノ基、とくに『アミド基』や『イミド基』を持つ物質を「ケイソウくん」に混合し、テストを行いました。
そして数々のテストの結果、廃珪藻土を配合したときと同等以上の『ホルムアルデヒド低減効果』が認められたのです。

他社製品との比較でも実証された効果

このようにして、それまでの『ケイソウくん』に、『アミド基』や『イミド基』を加えることで、絶妙な相乗効果ーホルムアルデヒド低減効果を持つ製品が誕生。この製品は、他社製品と比較しても、その性能に優れ、他に類を見ない珪藻土製品であることもわかりました。
そして、株式会社ワンウィルさんと、神奈川県産業技術センター(当時は神奈川県産業技術総合研究所)の共同開発による新しい「ケイソウくん」は、『かながわスタンダート』に認定されるなど、話題の塗り壁材として販売されています。

本当にいいものを生活者の皆さんの手に!

神奈川県産業技術センターの役割は、ものづくり支援、研究開発、交流・連携などを通じた技術支援により、企業の発展に貢献することはもちろん、その先の消費者の生活の質の向上を実現することでもあります。
約2年間の研究開発期間を経て誕生した「ケイソウくん」は、産業技術センターがお手伝いした『ホルムアルデヒド低減効果の高い無機壁材』が製品化されたものです。